徒然制作日記 頭蓋骨



今回は頭蓋骨に挑戦した。

制作前に書いた図案はこちら。



頭蓋骨図案


お気づきだろうか。
前回のMORIO(※1)に比べ、精密さが段違いである。
これはMORIOが創作されたキャラクターであるのに比べ、頭蓋骨は現実にある物だからである。
現実にある物の場合、完成度によっては違和感を生じ易いため、細かいデータが必要である。
逆に言うならば、実際に存在するものであるからこそ細かいデータを取る事が可能であると言えよう。

今回取った数値(※2)の数は、眼窩(眼球の入る穴)までの距離や大きさ、上顎の前から、横からの大きさなど、ゆうに30を超える。
しかし本物そっくりに作るのであるならば、それでも足りないくらいである。

用いるのはまたまた石膏柱である。



石膏柱


この石膏柱の大きさは40x80x40(mm)であるため、これに収まり切るように取った値を換算しなければならない。
よって、今回の頭蓋の大きさは32.6x36.7x25.5(mm)となった。
また台座は縦に細長い頭蓋骨とのバランスを考え、やや長めにとった。






頭蓋を作ろう。

石膏での制作手順は「徒然制作日記 MORIO」で書いた通りである。
ただし、MORIOよりも精密に彫らなければならないため、少しの彫りすぎが命取りとなりかねねない。
そのため、実際よりも1〜2mm程の余裕を持って彫る作業となる。

彫る順序はMORIOの時と同じく、まず横に数値通りの頭蓋骨の絵を描き、削り落とす。
中切歯による出っ張りや鼻腔によるへこみ、カーブなど、細心の注意を払いながら削っていく。
前からも同じように削り落とす。眼窩は掘る(※3)




さて、図案通りに掘り終わるとどうなるのか。

この様な出来である。



頭蓋骨 図案通り


 
前から               横から


これを見ると誰しも違和感を感じるだろう。
眼窩周りがゴーグルの様に出っ張っている。これでは頭蓋骨とはとても言えない。
何処かミスをしたのだろうか。


実は、これで正しいのである。

正面から見た状態でも横から見た状態でも、図案通りに彫られている。
これは、図案に描かれていなかった「斜めからの視点」に因るのである。
二次元と三次元の違いが極端に出てしまっているのだ。
MORIOは自分の想像通りに調節すればいいが、頭蓋骨はそうはいかない。
解消するには、実物を見るしかない。

しかし、実際に頭蓋骨の模型を入手する必要はない。
有り難い事に頭蓋骨の写真はインターネットに溢れているため、わざわざン万円の模型を買う必要は無いのである。
インターネットで画像を検索しつつ、微調整を加えていく。






調整し終わった頭蓋骨は、この様になった。



 
前から               横から  

斜め前から



細部に間違い(※4)はあるが、大まかな形は図案の通りである。

紙ヤスリで綺麗にしていこう。



普通はよく乾燥した後に着色するが、今回は乾燥をほどほどにした。
理由は後に書く。

さて着色だが、ここで考えるのは「色」である。
通常骨というと白だが、ここで白を使うかどうかが考えどころである。
アクセントとして白を使うのにはなんら問題は無いが、今回の作品は白が主体になってしまう。
石膏しかり紙粘土しかり、元の材料の色が白である場合は白は手抜き感が出てしまいやすい。
これは仕上げのレベルにもよるが、紙ヤスリをかけただけなので極力避けたい。
よって白以外の色、今回は古びた感じを出すため白に黄土色を混ぜて使用した。

ここで乾燥する前に着色した事が効いてくる。
膨張により絵の具にひび割れが生じる(※5)わけだが、これが古びた感じを一層強めるのである。
ちなみに今回のは計算で生じた物ではなく偶然で生じた物である。

また眼窩や鼻腔、台座の色は黄土色に黒を混ぜて使用した。


もちろん色ムラは無いように、何回か塗り重ねる。



頭蓋骨完成。



頭蓋骨 着色後 正面



正面




さて私が頭蓋骨を彫ったのは学術のためではなく、創作として、である。
よって、ちょっとした細工が後ろに作られている。
これは図案に無いものである。








 
細工正面             細工左

細工右



頭蓋骨を卵に見立てた、何か怪物めいた物を彫り込んだ。


頭蓋骨を死と考えて、「死から生が生まれる」という輪廻転生の概念を、

作成した後に付け加えた。


頭蓋骨のマーブルな色合いが作品の存在感を引き立てている。
石膏は削る際に固まりで取れてしまう事もあり、mm単位での細部の表現は難しいが、ある程度の細かさや質感ならば表現出来る事がわかる。





※1 MORIO

  朝梟の創作した、ややメタボな体系のキャラクター。欲しいと言う人が後を絶たない。
  知り合いに「たまごっちに出てきたクチバッチに似てる」と言われ、パクリ疑惑が浮上する。
  勿論パクリではない。
  MORIOについての詳しい話は「徒然制作日記 MORIO」参照の事。



※2 取った数値

  これはとある本の挿絵から取った値である。
  専門の本であるため、挿絵の精密さには信用がもてる。
  実物を保持しているならば、実物から取る事が一番望ましい。
  だが朝梟は実物を保持していない。言うまでもなく犯罪だからである。



※3 掘る

  ウホッいい眼窩。  冗談である。
  穴を掘る際の注意点だが、ただ穴を掘る事を考えて彫ってしまうと周りも削れてしまう。
  重要なのは、「周りに山を作っている」と考えながら彫る事である。



※4 細部に間違い

  恥ずかしい話だが、細部の至る所に間違いがある。
  一番大きな間違いは上顎骨の削りすぎである。
  こういった間違いがある時は、こう考えると良い。
  「これは学術に依る所の作品ではない。美術に依るものである。」


※5 ひび割れが生じる

  携帯では画質が悪いため、こちらにアップする写真に反映されていない。
  微妙な色合いも携帯では反映されないため、実物よりも単調な作品になってしまう。
  ただ有り難い事に細かい色ムラも反映されないのだ。
  おかげで実物よりも完成度が高く感じる。






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